[2020.03.08]自分で考えるんだ
部屋に一枚の絵を飾っている。
2018年ぐらいに自分で描いたもの。
タイトルは『輪郭』。
幼稚園から小学校低学年ぐらいまで、
絵画教室に通わせてもらった。
とても楽しい時間だった。
先生は50代ぐらいの男性で、いつも優しく笑顔の印象が強い人だった。
ある日先生はこう言った。
『色を塗るんじゃなくて、色を置くんだ。』
意味がわからないです、と僕は述べた。
僕の顔を見るわけでもなく、戦前の国家を思い出すような表情で先生は続けた。
『自分で考えるんだ』
目は冷たく、口以外の筋肉は運動を止めたかのように塑像と化していた。
そこに明確なチュートリアルはなく、極めて抽象的で直接的。
『教わる』というのはもしかしたら『教わらない』ということなのかもしれない。
もう答えは己の内部に存在しているのかもしれない。(わからないが)
日々のライフワークの中で考えこむことがしばしばある。
作曲しているとき、テクニカルを傍観しているとき、プログラムのことを考えているとき、文章を考えているとき。
100%満足するような絶対的な解答を導いたことはない。
依って立つべきは今ある自分自身なんだろう。
キッチンで熱いブラックコーヒーを淹れ、白亜の壁にかけたこの絵を眺めた。
『自分で考えるんだ』
誰もいないはずの部屋に懐かしい声が響いた。
◆略歴◆
なまえ いとうあきら
1985年、福岡県生まれ。システムエンジニア時代に投資を自動で行うAIを開発。現在はシステムトレードを中心に、外貨、現物株式、オプション、先物等の投機的投資を行う。その他、プログラミング、作曲、カメラなど。